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 マンションでは複数の居住者がひとつの建物内で生活をともにするため利害が対立することは避けられません。こうしたトラブルが発生した場合に管理規約は解決への足がかりとなる重要な規則となっています。

 また、日常生活に直接関係してくるだけに是非一度きちんと内容を理解しましょう。今回(平成16年)の改正によって管理組合が実際に抱える諸問題に対してコメントや予防策が具体的に盛り込まれているので、これを参考として各組合の管理規約を見直してみてはいかがでしょうか。

管理規約とは・・・

 管理規約とは「マンションの管理、または使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保すること(標準管理規約第1条)」を目的とし、集合住宅特有の権利・利用関係を調整しながら居住者が一体となって維持管理できる体制を整備するために必要な共同のルールである。

 居住者の構成によって考え方は違ってくるため管理規約もマンションごとに異なるのが自然です。
しかし管理組合に優位な内容でも、区分所有者に片寄っていても不都合であり、また、盛り込まなければならない必修事項などもあるので、一定のレベルを維持する必要から作成されました。

平成9年に中規模の住居専用マンションを念頭に標準モデルとして中高層共同住宅標準管理規約が作成されました。(昭和57年に作成されてから、その内容に手を加えることはなかったが、時間の経過による居住者の価値観や生活観の変化に伴い発生する新たな問題などにも対応できるよう改正が行われた。)さらに日常生活の基本ルールを定めた「標準管理規約」が平成16年1月に改正されました。マンション管理適正化法の施行や区分所有法改正の流れを受けた2度目の大改正です。マンションが主要な居住形態として定着し、またライフスタイルの多様化により生活上の様々な問題がクローズアップされるなか、実際に生活する居住者の“目線”から見た”等身大”の改正内容となっているのが特徴になっています。

駐車場の使用に関する条項

 改正前は「専用使用権」という表現が使われていましたが、半永久的に利用を約束する意味に誤解される恐れがあることからその文言を削除し利用契約上の権利として「駐車場利用契約」としました。

リフォーム工事申請


 今後も築古物件の増加によって専有部分のリフォーム工事が多くなると予想されるため、工事関係者の出入り、騒音、振動などで周辺へ迷惑をかける心配や、躯体に悪影響を与える工事を未然に防ぐために工事内容を事前にチェックする目的で、改築時の手続きを整備する取り決めを義務付けられました。

修繕積立金の分別会計の徹底


 一般管理費と修繕積立金の会計は区分して取り扱わなければなりません。
管理費が不足するたびに、積立金を一部取り崩していたら計画通りに積み立てられなくなってしまいます。例外的に緊急で多額の費用を要する場合のみ、総会決議によって一部取り崩し可能とする。また、駐車場利用料もできるだけ全額、積立金会計として扱うようにしたい。

役員について


 理事の任期について、だいたいの組合は1年〜2年で交代する輪番制をとっているようです。
 率先して引き受ける居住者は稀で、できればやりたくないというのが本音であり、その結果、公平に順番で役員を交代させるようにしている。
 理事になれば嫌でも管理に関心をもたざるを得なくなるので、管理に対する意識の向上には役立つとおもいますが。
 しかし、やっと慣れた頃に交代すると、次の理事はまた最初から勉強しなければならず、管理のレベルがいっこうに向上せず継続性も失われやすくなってしまいます。
一部に特定され過ぎるのは独善に陥る可能性があるので危険ですが、居住者の中には法律や建築などに精通した人がいるとおもいます。
 こうした人をキーマンにする人選を心がけていきたいものですね。
 また、本来理事は区分所有者本人しかなれませんが、その配偶者や同居家族まで範囲を広げることも検討しましょう。
 総会や理事会の欠席率を下げることにつながります。
さらに今後は賃借人にも条件付で認めていかなくてはならなくなってくるのではないでしょうか。

ペット問題


 ペット登録数が2000万頭を超えたそうです。
 今は、核家族化や高齢化によりマンションでペットを飼育する家庭が増え、新築物件でも「ペット可」を売り文句にセールスしているマンションも多いです。
 ペット飼育の賛否は管理組合が決めるのが本筋で、分譲会社や管理業者に決定権はありません。
ペット問題が後をたたない原因のひとつは、規約上でペット飼育のルールが曖昧になっているものが多いからではないでしょうか?
 その意味からも規約や細則でペット飼育賛成派にも反対派にも公平にきちんとした規定をしたいものです。
 案としましては、基本的にペット飼育は許可し、その代わり飼育者はペット委員会などを設立し他の居住者に迷惑をかけないような自主規定をつくり、トラブル発生時には委員会で連帯責任を取るような仕組みにしてはいかがでしょうか。

専有部分と共用部分の範囲を明確にする
 
 大多数は居室の床下にある配管を共用部分と考えているのではないでしょうか?


 今までは床下の配管から漏水が発生した場合など、規約上、床下配管は専有部分とされるため管理組合の一方的な権限で勝手に手を加えることはできませんでした。
 そこで「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要性があるときは、管理組合がこれを行うことができる」としました。
 ほかにもドアやサッシ・窓ガラスを専有部分だと思っている人は多いようです。
こうした開口部については最近の新築マンションであれば設計段階からセキュリティーや防音対策が施されていますが、既存物件ではリフォームによる事後工事とならざるを得ません。
そこで「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部にかかる改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする(標準規約第22条)」ことが規定(新設)されました。
 

 窓のリフォームは共用部分の変更に該当するため居住者が単独で行うことができないだけに、管理組合主導による修繕が可能となることは区分所有者にとって歓迎できる改正点ではないでしょうか。
いずれにしても、こうした勘違いが生じるのは、管理規約に具体的な範囲が明記されていないからで、イラストなどを加えて具体的に、しかも正確に明文化する必要があります。

もっと専門家を活用しましょう

 多種多様な価値観を持つ居住者が同じ屋根の下で生活をするなかで、複雑な権利関係や建物構造上の技術的判断、さらに管理費等の会計処理と、マンションを良好な状態で維持管理することがいかに重要で、同時に非常に大変だとおもいます。
こうした組合運営にマンション管理士などの専門家による助言や指導、援助を求めること(同第34条)が新設され、さらに、こうした費用を管理費会計から支出する(同27条)ように規定しています。

建替えに関する規定の整備

 新たな住宅政策としてストック重視の法整備が進むなかで、マンションの建て替えに関わる合意形成に必要となる事項の調査に関する業務が「管理組合の業務」と明確化(同第32条4項)され、こうした費用を修繕積立金から充当する(同第28条1項4号)ことが明文化されました。
さらに、建て替えに関わる合意の後も建替組合の設立認可等までの間は、管理組合消滅時に建て替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた額を限度として、建て替えに関わる計画、計画に必要な事項の費用を修繕積立金から取り崩すことができる(同第28条2項)規定が新設され、その際(取り崩し)には総会の決議を経なければならない(同47条7号)こととなりました。

 まだ建て替え問題は実例も少なく、どうしても他人事のように思いがちですが、法律面では規制を緩和し建て替えを推進する方向であり、また、マンションを所有している以上は常に付きまとうテーマでもあります。建築物には必ず寿命があり、形あるものはいつかは壊れる。そういう意味ではマンションの建て替え問題は”究極の選択”ではなく”日常管理の延長”であることを裏付ける内容といえるのではないでしょうか。

 制度上はまだまだ未整備ですが、長い目で見た場合、何千万円もはたいて購入した「資産」を生かすか殺すかは詰まるところ建て替えに行き着くようにおもいます。規約上も柔軟に対応できる内容を盛り込むことをおすすめいたします。

管理組合文書の保管

 管理規約原本、理事会や総会の議事録、法定点検の記録などマンション管理ではいくつもの重要な書類がありますが、宅建業者から交付を受けた設計図書の管理(第32条5号)、修繕時の修繕履歴の整理および管理(第32条6号)が管理組合の業務として盛り込まれた。また適時適切な大規模修繕が行われるために長期修繕計画の策定を管理組合の業務と位置付けています。
こうした業務は本来であれば、わざわざ規約に盛り込むまでもない「当たり前」の事項ですが、「必要なときに見つからない」「担当者が移転してしまい当時の経緯が分からない」といった事態が起こっていることから、注意を喚起する意味で明文化されています。

電磁的方法を分けて規定(同49条、50条)

 パソコンやインターネットの普及、また区分所有法の改正内容を受けて、組合運営における議決権行使の方法や議事録の作成および保管を電磁的方法によって行えることとし、一方で従来どおり書面による方法も併存させることで、各管理組合のIT化の度合いに応じてどちらでも選べるよう、2パターンの規約内容を設定した。なお、電磁的方法とは電子メールやホームページを立ち上げている管理組合では掲示板への書き込み、またパソコン本体(ハードディスク)やコンパクトディスク(CD)への記録などを指します。

敷地および共用部分の変更

 共用部分の変更は基本的に特別決議となるが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」という改正区分所有法(第17条)を準用して、標準管理規約でも外壁や屋上防水などの大規模修繕工事では工事費用に左右されず普通決議で行うことが可能(同47条3項)となりました。

未納管理費の取り扱い

 未納管理費はマンション管理会計に悪影響を与えることとなります。そこで「組合員が納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合はその未払金額について年利**%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる(同第60条2項)」とした。「弁護士費用」の取り扱いを明確にしたことが特徴といえます。
また「理事長は未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により管理組合を代表して訴訟その他法的措置を追行することができる(同第60条3項)」条文が追加された。従来は総会決議を要していたため時間がかかっていたが、改正後は理事会によって判断できるようになり機動性が向上しました。

管理規約の制定および変更時の位置付け

 これまでの標準管理規約では、マンション分譲業者や管理業者が管理規約の「原始案」つまり新築時にこれからマンションの区分所有者となる人に対して配布する管理規約の素案を作成するための「指標」として位置付けられていたが、改正後は「管理組合が各マンションの実態に応じて管理規約を制定、変更する際の参考(マンション標準管理規約コメント)」として利用できるように改められた。

 標準管理規約の「標準」の意味が指針から参考へと変更された。「分譲業者や管理業者向け」から「管理組合あるいは区分所有者向け」へ見直されたと言ってもいいでしょう。マンションの日常管理が管理業者主導で行われ、居住者は管理規約の内容など意識もせず無関心で過ごしていた時代から、管理費削減や管理業者の変更などが注目されるように、やっと居住者自身がマンション管理を自分のこととして意識しはじめたことが背景にあるといえるのでは。

 *マンション標準管理規約「団地型」および同規約「複合用途型」の改正内容は省略いたしました。

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